GENERAL DENTIDTRY歯周病治療
歯周病治療について
歯周病は歯を失う原因の1位とされていて、日本人の国民病とも呼ばれています。
令和4年に行われた厚生労働省の調査によると、罹患率(歯周病にかかっている人の率)はほぼ2人に1人という結果で、高齢になるほど割合は高くなる傾向にあります。
歯周ポケット(4㎜以上)を有する人の割合の年齢階級別年次推移
引用:※厚生労働省「令和4年(2022年)歯科疾患実態調査結果の概要」
歯周病とは
細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯茎や歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。
症状が重くなると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまい、最終的には歯を抜かなければならなくなります。
歯周病は痛み無く進行していく病気のため、早めに治療をすることが大切です。
歯周病の原因
磨き残しなどで残ったプラーク(汚れ)に含まれた細菌が歯周病の原因です。
プラークとは歯に付着している粘着性の沈着物で、プラークにはlgあたり約1,000億個の細菌が含まれており、その細菌が生産する毒素によって歯肉に腫れや出血を起こします。
進行すると炎症により歯肉が腫脹し歯周ポケットが深くなり、酸素の少ない場所を好むほとんどの細菌が、その深くなった
歯周ポケットに入り込み増殖することで、さらに歯周病が進行します。
また、喫煙・糖尿病・ストレスや疲労による体力や免疫低下が歯周病を悪化させる要因とも言われています。
歯周病は「歯肉炎」と「歯周炎」の総称
歯肉炎
歯肉炎は歯周病の初期段階のことで、歯肉(歯茎)が炎症を起こした状態。
プラーク細菌が歯の周りや歯間などの歯ブラシが届きにくい部分に絶えず付着することで、歯茎の赤みや腫れ、ブラッシング時に出血するなどの症状が現れます。
プラークは72時間以上付着した状態にしておくと、唾液中のカルシウムやリン酸と結びつき、硬い歯石へと変化します。
歯石は歯ブラシでは落とせないため、歯科医院での歯石取りが必要になります。
歯周炎
歯肉炎から進行し歯を支える周りの組織に炎症が起こり、歯槽骨や歯根膜へと炎症が及んでいる状態。
歯周炎初期は、歯槽骨が溶け始め少し歯がぐらぐらするようになるため歯が浮いた感じがし、硬いものを噛むと違和感をおぼえます。また歯茎の腫れや出血、口臭なども気になるようになります。
徐々に深くなった歯周ポケットにプラークが付着することで歯肉を腫らし、細菌はさらに深くまで侵入していきます。
そして、磨ききれなかったプラークは硬化し歯根にまで歯石が付着し、さらに歯周病が悪化してしまいます。
歯周病治療
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歯肉炎自覚症状が
ほとんどない軽度の歯周病の場合(歯肉炎)
歯周病の初期症状として、歯肉が赤く腫れ上がる、ブラッシング時に出血するといった症状が現れます。
軽い歯周炎であれば、プラークを除去することでほとんどのケースが改善できます。
歯周病は磨き残しによるプラークが根本的な原因のため、適切なブラッシングによるプラークコントロールが最も重要です。
ご自身で行うセルフケアに加え、定期的なメインテナンスを行うことで歯周病の予防・改善が可能になります。 -
軽度歯周炎中等度歯周炎膿が出る
軽度から中度の歯周病の場合(歯周炎)
歯肉からの出血や歯肉が腫れてブヨブヨする、歯肉が下がって歯が長くなった気がする、歯を揺するとグラつく、口臭がするなどの症状が現れます。この頃になると、歯周ポケットが4mmから6mmと深くなりご自身でのブラッシングではポケットの奥まて届きにくく、プラークが歯周ポケットに溜まっていきます。
目に見えない部分ですが、そのまま放置しておくと症状は悪化し続けるため、歯科医院での歯周治療が必要になります。
適切な治療とご自身でのブラッシングを行えば、歯を残せる可能性は非常に高いです。 -
重度歯周炎歯が
グラグラ重度歯周病(歯周炎)
歯周病が重度になると、日常生活に支障が出るほど症状が進み、歯のグラつきで食事が困難になる、歯肉が下がり歯根が見える、持続的な出血や排膿などのはっきりとした自覚症状が現れます。
歯周ポケットは6mm以上となり、歯の周りの骨(歯槽骨)が大きく溶かされている状態のため、抜歯が必要になるケースも多くなります。
実際の歯周病治療の流れ
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1歯周病検査
- レントゲン検査
- 歯周病の進行具合を把握するためレントゲン検査を行い、どの程度顎の骨が細菌によって溶かされているのかを確認します。
- 歯周ポケット検査
- 歯周ポケット(歯と歯茎の溝)の深さを測るため、歯周ポケットにプローブという器具挿入して数値を調べます。
- プロービング時の出血(BOP)
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歯周ポケットにプローブを挿入時に出血があるか確認します。出血の有無は歯周病の活動性を示します。
出血が顕著な場合は歯周病が活動的で進行傾向にあると考えられます。 - 動揺度検査
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歯周病は進行すると歯を支えている骨が溶ける為、歯がグラグラ揺れてきます。
歯の動揺度は一般的に4段階で評価します。
- MO0度 生理的にしか動かない
- MO1度 唇舌方向へわずかに動く(0.1~0.2mm)
- MO2度 唇舌・近遠心方向に動く(1.0~2.0mm)
- MO3度 唇舌・近遠心・垂直方向に動く(2mm以上)
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2歯周基本治療
- 歯ブラシ指導
- 歯周病を改善するためには歯周病をよく知ってもらい自分自身で正しいブラッシング方法を身につけてもらうことが最も大事です。また、生活習慣や食習慣の注意点を知ってもらうことも必要です。
- スケーリング、ルートプレーニング
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歯面に付着しているプラークや固くなって歯にこびりついた汚れ(歯石)を専用の機械や器具で取り除きます(スケーリング)
また専用の器具で歯根の表面を滑沢にし、細菌がつきにくい状態にします。(ルートプレーニング) - 適合の悪い詰め物、被せ物のやり直し
- 汚れがつきやすい環境を作っている適合の悪い詰め物や被せ物を除去し、再治療を行います。
- 咬み合わせの調整
- 歯周組織に強い力がかかってる場合咬み合わせの調整、マウスピースなどの治療により歯に加わる力をコントロールしていきます。
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3歯周外科治療
歯周基本治療で改善が見込めない場合歯周外科処置を行います。
ブルーラジカルでのインプラント周囲炎治療
- バイオフィルム内の菌を99.99%殺菌
- ブルーラジカルの活性酸素は、細菌の細胞膜を破壊し、インプラント周囲炎の原因菌(特に嫌気性菌)を効果的に殺菌します。抗生物質と異なり、薬剤耐性菌のリスクがない。
- 炎症の抑制
- ブルーラジカルの作用により、炎症を引き起こす細菌を減少させ、歯ぐきの腫れや出血を軽減。
- 歯ぐきや骨の修復促進
- 組織再生を促すことで、炎症後の回復を早める。
- 痛みや不快感が少ない
- 外科的処置を必要とせず、痛みや不快感を軽減しながら治療できる。
歯周病と全身疾患の関係
歯周病が進行すると、歯周病菌が歯茎から血管内に侵入し、毒素を放ちながら全身を巡ります。血管に入った細菌は死減しますが、「内毒素」と言われる細胞壁に含まれる毒物は細胞が死んでも残り、全身に悪影響を及ぼします。
歯周病菌が及ぼす全身疾患のリスク
- 脳血管疾患
- 認知症
- 関節リウマチ
- 心血管疾患
- 誤嘩性肺炎
- 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
- 心臓疾患
- 肥満
- 糖尿病
- 低体重児出産・早産
この他にも、歯周病菌が及ぼす全身への影響は世界中で研究が進められているため、今後も歯周病と全身疾患の関連性がさらに解明される見込みです。
歯周病予防
歯周病は、痛みなどの自覚症状がなく、いつの間にか進行していく病気のため「サイレント・ディズィーズ(静かな病気)」とも呼ばれています。
中高年以降の病気と思われがちですが、自覚症状が現れるのがその世代なだけであり、30代頃から歯周病は少しずつ進行しています。
そのため、何よりも重要なのは「予防」すること
歯周病は完治が難しい上、進行すると歯を失うリスクが最も高い病気です。
虫歯治療とは違い、歯周病を治療する上で大切なのは患者さんの生活習慣の改善や治療への協力です。
免疫力を低下させないために、食事や睡眠をしっかりとり、ストレスケアを行うことや、喫煙や過度な飲酒や肥満・糖尿病も歯周病に影響を及ぼすため、合わせて生活習慣の改善を行うことが必要です。
セルフケアに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助器具を使い、細菌の元となるプラークを丁寧に取り除きましょう。
また、定期的に歯科医院でのプロフェッショナルケアによりセルフケアで取り切れなかったプラークの除去や歯石の除去を行うと同時に、歯周病やお口のトラブルをチェックしておきましょう。
自分の歯を長く残せるように、ご自身での「適切なブラッシング」と「生活習慣の改善」に加え、定期的な歯科医院での「メインテナンス」を受けるようにしましょう。