COLUMNコラム

2026年10月12日コラム

歯ぐきの出血と血圧が気になる方へ|歯周病と血管・脳の関係

出血と血圧をつなげて考える前に、知っておきたいこと

歯磨きのたびに歯茎から血がにじみ、健康診断では血圧も指摘された。身近な人が脳の病気で入院したばかりなら、口の中の小さな変化まで気がかりになるのは自然なことです。歯周病と血管の病気には研究上の関連が報告されていますが、発症の原因とまでは言い切れません。分かっていること・まだ分からないこと、そして相談の目安を順に整理します。

この記事の要点まとめ

  • 歯周病と血管疾患には研究上の関連が報告されていますが、因果関係や脳梗塞予防効果は確立していません。
  • 歯茎の出血が続く場合は歯科で検査し、血圧の指摘は内科などで評価を受けましょう。
  • 歯周病治療は検査・処置・再評価・継続管理で進み、服薬や持病は医科・歯科に伝えて相談します。

歯周病の炎症は血管にどう関わる?脳の病気との関連

歯周病の炎症は血管にどう関わる?脳の病気との関連

歯茎の炎症が血流を通じて血管に影響する可能性は、研究で検討が続いています。ただ、脳梗塞などの直接の原因と確かめられた段階ではありません1。

出血はなぜ起きる?歯周病と歯茎の細い血管

歯周病は、歯と歯茎の境目にたまった歯垢(細菌のかたまり)をきっかけに、歯を支える歯周組織で炎症が続く病気です1。歯茎には細い血管が網の目のように通っています。

炎症が起きると血管が広がってもろくなり、歯ブラシが軽く触れただけでも血がにじみやすくなります。

一方で、出血の有無だけでは進行度を判断できません。出血が少なくても奥で進んでいることがあり、歯周ポケット(歯と歯茎のすき間)の深さや骨の状態を検査して初めて分かります。

口の炎症から血流へ、考えられている経路

研究では、次のような段階が仮説として示されています1。

1. 歯周ポケットの内側の歯茎が炎症で傷つき、細菌が入り込みやすくなる

2. 細菌やその成分が血流に入る(血管内侵入)

3. 体の中で炎症にかかわる物質が増え、慢性炎症が続く

4. 血管の壁でも炎症が起こり、動脈硬化を進める一因になりうる

細胞や動物を使った研究ではこうした変化が観察されていますが、人の体で同じ順序が起きていると確認されたわけではありません1。

ポイント

血流への侵入から血管の変化までは、現時点では「考えられている経路」です。

動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞との関連はどこまで分かる?

多くの人を追跡する疫学研究では、歯周炎のある人に動脈硬化性の心血管疾患が多いという関連が報告されています1。歯周病治療のあとに心血管リスクの代替指標が下がった試験もありますが、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントへの直接的な効果は結論が出ていません1。

脳卒中には、血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血などがあります。研究で扱われるのは主に動脈硬化と関わる脳梗塞側で、脳卒中全体へそのまま広げることはできません。

血圧も同じです。年齢や体質、塩分の多い食事、運動量など多くの要因が重なるため、歯周病だけで説明できるものではありません。

「歯周病が脳梗塞の原因」とは言い切れない理由

関連があることと、原因であることは別の話です。たとえば喫煙は歯周病を進めやすくするうえ、血管の病気にも関わります。

遺伝情報を用いて喫煙の影響を調べた研究のまとめでは、循環器を含む多くの病気と喫煙との因果的な関わりを支持する結果が示されています2。これは歯周病の因果を示す資料ではありませんが、両方に共通する要因があると、見かけ上の関連が生まれうることを考えるヒントになります。

なお、歯の根の先にできる炎症(根尖性歯周炎)と心血管疾患の関連を解析した研究もあります3。歯周病とは別の病気を対象としたもので、口の炎症と全身の関係は、病気ごとに分けて慎重に検討されている段階です。

歯茎の出血と血圧が気になるとき、何から始める?

出血は歯科、血圧は医科と窓口を分け、同時に動き出すのが近道です。どちらか一方だけで全身の状態を判断しようとしないことが、落ち着いた対応につながります。

出血が続くなら歯科へ、血圧の指摘は医科へ

次のような様子が繰り返されるなら、歯周病の検査を受ける目安になります。

  • 歯磨きのたびに血がにじむ状態が続いている
  • 歯茎が腫れぼったい、むずがゆい、口臭が気になる
  • 歯が浮いたように感じる、歯と歯の間にすき間ができてきた

血圧の指摘は、内科などで改めて評価を受けてください。顔や手足の片側が急に動かしにくい、言葉が出にくいといった症状は、歯科の予約を待たず救急を含めてすぐに医療機関へ連絡する状況です。

歯磨きに加え、喫煙・糖尿病にも目を向ける

出血するからと磨くのを控えると、歯垢が残って炎症が長引きやすくなります。毛先のやわらかい歯ブラシで歯と歯茎の境目を小刻みに磨き、歯間ブラシやフロスで歯と歯の間も無理のない力で清掃しましょう。

喫煙や糖尿病は歯周病の状態に関わり、心血管疾患のリスク要因とも重なります1。喫煙が多くの病気に関わることも研究で示されています2。禁煙や血糖の管理は医科の主治医と相談しながら進め、服用中の薬を自己判断で変えたりやめたりしないでください。

検査から治療後の確認まで、通院で行うこと

歯周病治療は、一般的に次の流れで進みます。

段階 主な内容
検査 歯周ポケットの深さ、出血、歯の揺れ、レントゲンなど
基本の治療 歯垢・歯石の除去、歯磨きの指導
追加の処置 深い歯周ポケットが残る部位への処置
再評価 炎症がどう変わったかを確かめる
継続管理 定期的なクリーニングとチェック

必要に応じて歯科用CTで骨の状態を立体的に確認することもあります。深い歯周ポケットには、切開を伴わない方法(ブルーラジカルなど)が検討される場合があります。これは自由診療(公的医療保険が適用されない)で、器具をポケット内に入れるため麻酔が必要になります。

治療の範囲(対象となる歯の本数)、通院の回数、再評価までの期間、費用は、歯周ポケットの深さや骨の状態によって一人ひとり異なります。ブルーラジカルなどの処置の通院回数や再評価までの期間にも個人差があります。具体的な予定は歯科医師にご相談ください。その後も継続管理として定期的な通院が続きます。

自由診療の費用は医療機関ごとに設定されており、ブルーラジカルの場合、一般的な相場は1歯あたり1万〜3万円程度です。対象となる歯の本数が増えるほど総額は大きくなり、検査の内容によっては別に費用がかかることもあります。これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえで、範囲・回数・期間とあわせて事前にご案内します。

また、麻酔や処置のあとに痛み・腫れ・しみる感じが出ることがあります。歯石を取った後は、歯の間を塞いでいた歯石の除去や炎症による腫れが引くことで歯茎が下がり、歯が長く見えたり、すき間が目立ったりする場合があります4。症状や骨の状態によっては適応とならないこともあるため、ほかの治療法との違いも含めて説明を受け、納得したうえで選ぶことが大切です。

当院としては、検査結果をもとに必要な処置を見極め、不必要な処置を避け、今残っている歯をできるだけ長く守ることが大切だと考えます。なお、歯周病治療の目的は口の中の炎症を落ち着かせることで、心筋梗塞や脳梗塞を防げると言い切れる段階ではありません1。

ポイント

治療は検査・処置・再評価・継続管理の一連で考え、全身の病気の予防策と同じものとは捉えないようにしましょう。

相談するときに伝えたい出血と服薬の情報

当院を含め、歯科医院に相談するときは、出血がいつから・どのくらいの頻度か、健康診断での血圧の指摘、心臓や脳の病気の治療歴、服用中の薬を伝えてください。お薬手帳を持参すると薬の情報を伝えやすくなります。

血液を固まりにくくする薬(抗血栓薬)を飲んでいる場合、歯石除去などの際の出血については歯科医師にご相談ください。自己判断で中止せず、必要に応じて医科の主治医と歯科医師が相談して判断します。

手始めに、出血した日を1週間ほどメモし、健診結果とお薬手帳をそろえてから予約を取ってみてください。付き添いや仕事で時間が限られていても、1回目の相談で確認できることが増えます。

よくある質問

Q1. 歯周病と血圧には関係がありますか?

A. 歯周病と血管の病気の関連は研究されていますが、血圧の高さを歯周病だけで説明することはできません。血圧は年齢や食事、体質など多くの要因が関わるため、内科などで評価を受けたうえで、口の中は歯科で別に確認するのが現実的です1。

Q2. 歯周病はどのような病気ですか?

A. 歯と歯茎の境目にたまった歯垢をきっかけに、歯茎や歯を支える骨などの歯周組織で炎症が続く病気です1。初めは出血や腫れ程度でも、進むと骨が減り、歯が揺れることがあります。

Q3. 歯周病に関係する環境や生活の要因には何がありますか?

A. 歯垢の残りやすさに加え、喫煙、糖尿病などが歯周病の状態に関わる要因として知られています1。喫煙は多くの病気との関わりも研究されています2。生活習慣の見直しは、医科・歯科の双方と相談しながら進めてください。

Q4. 血管以外に、歯周病と関連が研究されている病気はありますか?

A. 糖尿病のほか、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産、骨粗しょう症などとの関係が気になる場合は、医師にご相談ください。歯周病がそれらの原因と決めつけず、持病がある場合は主治医にもご相談ください。

Q5. 歯周病の検査や治療の費用はどのくらいかかりますか?

A. 保険診療で3割負担の場合も、検査や歯石除去の費用は診療内容により異なるため、歯科医師にご相談ください。治療する範囲や回数、自由診療かどうかによって変わります。これは一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用は医療機関により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。

参考文献

1. Kim JY, Lee K, Lee MG, et al. Periodontitis and atherosclerotic cardiovascular disease. Molecules and Cells. 2024. PMID: 39515611 / DOI: 10.1016/j.mocell.2024.100146

2. Larsson SC, Burgess S. Appraising the causal role of smoking in multiple diseases: A systematic review and meta-analysis of Mendelian randomization studies. EBioMedicine. 2022. PMID: 35816897 / DOI: 10.1016/j.ebiom.2022.104154

3. Noites R, Teixeira M, Cavero-Redondo I, et al. Apical Periodontitis and Cardiovascular Disease in Adults: A Systematic Review with Meta-Analysis. Reviews in Cardiovascular Medicine. 2022. PMID: 35345267 / DOI: 10.31083/j.rcm2303100

4. 歯周病の治療 | 歯周病Q&A | 日本歯周病学会. https://www.perio.jp/qa/treatment/

都歯デンタルクリニック
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